2017 年 1 号(通号 40 号)
NDL 書誌情報ニュースレター 目 次
『日本十進分類法』新訂 10 版(NDC10 版)の適用開始について
(収集・書誌調整課 書誌調整係) 1
日本十進分類法(NDC)の歴史 後編
(総務部 企画課 髙橋良平) 3
第 41 回 ISSN センター長会議報告―ISSN 規格改訂と逐次刊行物目録標準化の動向
(逐次刊行物・特別資料課 柳澤健太郎) 11
平成 28 年度遠隔利用者アンケート結果について―当館が作成する書誌データ(全国
書誌データ) (収集・書誌調整課) 15
平成 28 年度遠隔利用者アンケート結果について―当館が作成する書誌データ(Web
NDL Authorities) (収集・書誌調整課) 21
国際目録原則覚書(ICP)の改訂版が公開されました
(収集・書誌調整課 津田深雪) 27
コラム:一生ケンメイ!(2)世界とつながる件名標目表へ―LCSH とのリンク
(国内資料課 西川久司) 31
おしらせ:平成 28 年度書誌調整連絡会議を開催しました
(収集・書誌調整課) 35
掲載情報紹介 36
ISSN 1882-0468 ISSN-L 1882-0468 NDL 書誌情報ニュースレター2017 年1 号 (通号40 号) 『日本十進分類法』新訂10 版(NDC10 版)の適用開始について 本誌2016 年4 号(通号39 号)でもお知らせしたとおり、国立国会図書館(NDL)は、2017 年4 月から『日本 十進分類法』新訂10 版(以下、NDC10 版。新訂9 版についても同様。)を適用します[1]。 書誌データについては、2017 年4 月1 日以降に新規作成したものにNDC10 版の分類記号を付与します[2]。こ れらは、NDL-OPAC で利用できます。JAPAN/MARC(M/S)でも、NDC10 版の分類記号を付与した書誌データを提供 します。 国立国会図書館サーチ(NDL サーチ)では、NDC9 版を適用している図書館への影響を考慮し、当面の間、 NDC10 版と、それを機械的に変換したNDC9 版の分類記号をあわせて利用できます(図1)[3]。 図1 NDL サーチの書誌詳細画面例(このデータは架空のものです) また、件名として使用する典拠データ(個人名、家族名、団体名、地名、統一タイトルおよび普通件名)に も、NDC10 版の分類記号を付与します[4]。これらは、国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)(図2)とJAPAN/MARC(A)で利用できます[5]。 図2 Web NDL Authorities の典拠詳細表示画面例 -1-
NDL 書誌情報ニュースレター2017 年1 号 (通号40 号)
適用開始に先立ち、NDC10 版を適用するに当たってのNDL における指針と分類表の解釈を示した「日本十進分
類法(NDC)新訂10 版分類基準」を公開しました[6]。
今後もNDL の書誌データ・典拠データをご活用ください。
(収集・書誌調整課 書誌調整係)
[1] NDC10 版適用については、本誌2016 年4 号(通号39 号)の記事もご覧ください。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10225466_po_2016_4.pdf?contentNo=1#page=2, (参照 2017-01-
24).
[2] NDC10 版による分類を付与するのは、現在、NDC9 版による分類を付与している資料群です。適用以降、NDC9
版による分類は付与しません。ただし、一部の書誌データについては、適用以降に新規作成したものにも、NDC9
版の分類記号が付与されていることがあります。
NDC9 版による分類を付与している資料群は、以下のページをご覧ください。
国立国会図書館. 書誌データ水準.
http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/levels.html, (参照 2017-01-24).
[3] 機械的に変換したNDC9 版の分類記号が付与された書誌データには、図1 のように「注記」欄にその旨が表
示されます。NDL サーチにおけるNDC10 版への対応の詳細については、以下をご覧ください。
国立国会図書館サーチにおけるNDC10 版適用開始について
http://iss.ndl.go.jp/information/2017/01/20_announce-3/, (参照 2017-01-24).
[4] 典拠データは、「著者名典拠」と「件名典拠」の2 種類があります。NDL では、後者に該当する典拠に対し
て、その内容を表す代表的な分類記号(NDLC、NDC)を「代表分類」として付与しています。
なお、適用以前に作成した典拠データにも、NDC9 版とNDC10 版の両方の分類記号が付与されている場合があり
ます。
[5] Web NDL Authorities とJAPAN/MARC(A)では、代表分類が利用できる件名典拠の範囲が異なります。Web
NDL Authorities では、地名、統一タイトル、普通件名が、JAPAN/MARC(A)では、個人名、家族名、団体名、
地名、統一タイトルが、それぞれ利用できます。
[6] 以下のページで公開しました。
国立国会図書館. 分類・件名(NDLC、NDLSH など).
http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/classification_subject/index.html, (参照 2017-01-24).
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NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号)
日本十進分類法(NDC)の歴史 後編
【はじめに】
前号では、日本十進分類法(Nippon Decimal Classification:NDC)の誕生前からNDCが日本の標準分類法と
して確立するまでの歴史をご紹介しました。今号では、日本図書館協会分類委員会による初めての編集となった
新訂6版から、新訂10版までの歴史をご紹介します。
- 分類体系(綱目表)をめぐる議論
戦後の図書館界に広く普及して標準分類法の地位を確立したNDC にとって、次の課題は、その維持管理方法で した。前号でご紹介した「標準分類表問題」論争の中で和田萬吉も指摘していたように[1]、図書館分類法は完成 した時点で時代遅れになるという問題を必然的に抱えています。分類法を時代に即したものにするには、恒常的 に改訂していくことが欠かせません。他方で、書架分類法の改訂は、そのまま資料の排架に影響します。多くの 図書館が適用している標準分類法であれば、 その影響はさらに大きくなります。 分類委員会による改訂 (新訂6版 ~新訂10版)では、この「二律背反的な命題」[2]が常に論点となりました。
(1) 新訂 6 版 新訂6版[3]に向けた改訂作業は、1948(昭和23)年から始まりました。分類委員会では、綱目表(第2次区分 表) の修正をめぐって大きな議論が起きました。 議論の対象となったのは、 経済 (330)と 商 業(670)、交 通(680)、 通信(690)の扱いです[4]。 実は、原編者であるもり・きよし(森清)は、 「出発点の不備がいつまでも私の重荷となる」として、NDCを標 準分類法にすることにもともと消極的でした[5]。標準分類法としてNDCが使われることが決まると、もりは商業 (670) 、交通(680) 、通信(690)を経済(330)に接近させることを強く主張し、綱目表の変更をできるだけ避け たい加藤宗厚(当時の委員長)等と意見が対立します。経済と産業が分離しているNDC の分類体系には従来から 批判があり[6]、もり自身もNDCの「不備」であると強く認識していたのです。 分類委員会で幾度にも及ぶ議論を経た末、 最終的にこの案は見送られました。 その理由としては、 (a)商 業(670)、 交通(680) 、通信(690)を組み込むと、社会科学(300)の中が混み合ってしまうこと、 (b)NDCを学校図書館の 分類法に推奨した文部省編『学校図書館の手引』に綱目表が採用されていること、 (c)すでに約 400 の図書館で 使われており、綱目表を変更すると混乱が生じること、等が挙げられました[7]。議論の過程では、 「使用してい るものの強みということを言うが NDC の価値はむしろ将来にある。400 程度の館のために悔を将来に遺すことに なるのを恐れる。 」という意見も委員の中から出ましたが、加藤は、もりの改訂案は「もはや編者(執筆者注:も り・きよし)個人のものでなく日本図書館界全般につながるものであり、実際分類表の性格に鑑み委員長は保守 的な裁断を下さざるを得なかった。 」と回顧しています[8]。 約 2 年にわたる審議を経て、新訂6 版は 1950(昭和25)年に刊行されました[9]。第二次世界大戦という「革 命的な事件」[10]で社会が大きく変化したことを反映し、結果的には要目表(第3 次区分表)の40%以上が変更 される大規模改訂となりました[11]が、綱目表の変更は数か所にとどまりました。
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NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号)
(2) 新訂 7 版 経済(330)と商業(670) 、交通(680)、 通 信 (690)をめぐる問題は、新訂7 版に向けた改訂作業でも大きな議 論となります[12]。今回は、670/690を300(社会科学)の中に組み込むことを強く求める声が大学の経済学部・ 商学部等の図書館や専門図書館の中から上がりましたが、議論は賛否両論で平行線が続き、結論は出ませんでし た。そのため、1961(昭和36)年に刊行された新訂7 版では、綱目表は新訂6 版の体系を維持するかわりに、付 表(第 2 表 )「NDC330/350 について」を巻末に設け、330/350 に商業(670) 、交通(680) 、通信(690)を組み込 む案を示すことになりました。 付表はあくまで、各図書館が経済と商業を統合する場合の参考案という位置づけであり、委員長の加藤自ら、 「一般図書館や学校図書館においては採用する必要はあるまい」と述べるものでしたが[13]、他方で委員の中に は、 「この第2表的な要素をどんどん促進する図書館界の動きがあれば、8版に影響が出るでしょう。第8版改訂 の一つのエネルギーになると思う。 」との期待を口にする者もいました[14]。 しかし、この付表は新訂 8 版で、 「将来の課題」[15]として廃止されました。これ以降、改訂の議論の中心は、 要目表以下、特に細目表(本表)の分類記号の詳細度(桁数)に移っていきます[16]。
- 分類記号の詳細度(桁数)をめぐる議論
新訂 7 版では、要目表で約 127 件の新設・変更・削除が行われたほか、細目表の分類項目の細分化に重点が置 かれ、分類項目数は新訂6版より2,190件増加しました[17]。 「標準分類表問題」論争の中で鈴木賢祐が標準分類法の条件の一つに緻密さを挙げていたように[18]、新訂 7 版までのNDCは分類表を詳細化する傾向にありました[19]。加藤宗厚は、 「分類表はでき得る限り詳しく作ってお く方がよいのである。これを実際に適用するには図書館の性質、蔵書の多少によって適当な分類番号にとどめれ ばよいのである。 」と述べ、 「NDCは詳しすぎる」という批判はNDCの使用法の理解不足によるものだと反論してい ました[20]。
(1) 書架分類法としてのNDC(新訂 8版) しかし、1978(昭和53)年に刊行された新訂8 版は、この方向性を一変させます。 当時委員長だった中村初雄(1911-2006)は、 「書架分類としての日本十進分類法」という考えを掲げました。 中村は、 「書架分類の限界を知ることが、NDCを育ててゆく所以である」と述べ、 「いろいろの見地、特徴から探せ るいわゆるマルチプル・アクセスは、複数記入による索引法だとか、書誌分類によって解決すべき問題である」 と主張します[21]。 この考え方の下、書架分類として効果が薄いと判断された細目の簡略化が図られました。要目表レベルでの新 設・変更・削除数は57件[22]、新訂7版の新設項目であっても書架分類として必要性が低いとみなされたものは 撤回され、分類項目数は新訂7版から2,331件減少しました[23]。 このような方針変更に至る背景は何だったのでしょうか。 新訂 7 版の刊行から 2 年後の 1963(昭和38)年、 『中小都市における公共図書館の運営』 (以下、 『中小レポー ト』といいます)が、日本図書館協会から刊行されました。 『中小レポート』は、 「中小公共図書館こそ公共図書館 のすべて」であり、貸出こそ公共図書館の中心的機能であると主張し、これまでの図書館を「整理中心主義」 「資 料保存中心主義」として強く批判しました。分類については次のように批判しています。
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NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号)
分類、目録偏重の思想に対し先ず警告を発したい。いたずらに分類の桁数をふやしたり、図書記号を複雑化す ることは利用者にとってもわずらわしいものである。分類にあたっては、あまり神経質にならず、不統一にな らぬように心がけて、できるだけ簡略化すべきであると考える。 (中略)蔵書3 万冊の図書館における分類を検 討した結果、特定の主題を除いては原則としてNDC1,000区分(執筆者注:要目表レベル)で不都合を生じない 結論を得た。[24]
『中小レポート』 は図書館界に大きな衝撃を与え、 分類を含む整理技術についても議論が巻き起こります[25]。 これを受け、分類委員会はまず、分類記号4桁を原則とする「NDC簡約版」を編纂することを1970(昭和45)年 に発表します[26]。しかし、簡約版より本版の改訂を先にすべきであるとの意見を受けて簡約版の刊行は見送ら れ、大幅な簡略化を図った新訂8版が誕生するに至りました[27]。 『中小レポート』とそれに続く『市民の図書館』の刊行(1970年)以降、貸出をサービス理念の中心として公 共図書館は拡大・発展を遂げていきます[28]。石山洋(1927-2016)が評価したように、急増する公共図書館の「蔵 書の配架を適正に実現する上で」[29]、書架分類に徹した新訂8版は時代に即したものだったのでしょう。 「分類 表をこれ以上煩雑にしないで欲しい」という戸澤信義(1899-1995)の主張は、戸澤の言うとおり、図書館界で共 有されていたのかもしれません[30]。
(2) 書誌分類法としてのNDC(新訂 9版) しかし、石山を委員長に迎えて1995(平成7)年に刊行された新訂9 版では、新訂8版の方針を再び一転させ、 「全国書誌に即した書誌分類表」 を目標に掲げます[31]。 その背景には、 公共図書館の電算化と機械可読目録 (MARC) の普及がありました。 公共図書館では 1970 年代からコンピュータの導入が進み、1981(昭和56)年に始まる JAPAN/MARC(全国書誌 の機械可読版)の頒布等を通じて、MARCは図書館に広く普及していきます。各図書館が自分たちで分類作業する 時代から、MARC の書誌データに付与されている分類記号を流用するのが主流となる時代になりつつありました。 個別の図書館に対応した分類表ではなく、 「全国書誌に即した書誌分類表」を作ることが、将来予想される全国規 模のネットワークを通じた書誌検索・利用にも資することになると考えたのです[32]。 このような現状認識のもと、新訂9 版では、最近 10 年間に出版された国内出版物約50 万件をできるだけ適正 に分類することを目標としました。具体的には、約40件の図書の分類実績があることを目安として分類項目を細 分化し、その結果、新設項目数は1,096件にのぼりました(削除項目数は133 件)[33]。 他方で、NDCが標準分類法として確立していることに鑑み、新訂8 版の分類体系を維持することとし、要目表レ ベルでの改廃は新設3 件、削除3 件にとどまりました[34]。新訂 7 版における要目表の改廃が127 件、新訂8 版 で 47件であったことを考えると、際立った少なさです。新訂9版は分類項目の細分化に重点が置かれていたこと がわかります。 なお、 新訂9 版では、 分類表の構造に関わる改訂を避ける代わりに、 各分類項目の位置づけを明確にするため、 「中間見出し」の設置や「注記」の整備等が行われました。
- 新訂 10 版
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NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号) 新訂 9 版の 刊行から約20 年経った 2014(平成 26)年、新訂10 版が刊行されました。新訂10 版の改訂箇所は 多岐にわたりますが[35]、ここでは、新訂10版改訂方針の特徴である、 (1)新訂9版改訂方針の継承、 (2)わか り(使い)やすい分類表、という2点について見てみましょう。 (1) 新訂 9 版改訂方針の継承 2004(平成16)年に公表された改訂方針では、新訂9 版の改訂方針を踏襲し、 「主題検索に向いた分類表という 要請に応えうるものを指向すべき」であるとして、書誌分類法を目指すことになりました[36]。書誌分類法を目 指した新訂9 版の特徴は分類項目の細分化にありましたから、 新訂10版で細目表上の分類項目数にどのような変 化があったかを見てみましょう。 新訂 10 版の新設項目数は288 件、削除項目数は55 件でした[37]。これは、新訂9 版の新設項目数1,096 件の 約 25%、新訂6 版以降で見ても、最も少ない数です。要目表レベルでは2件の削除項目があったのみでした。 新訂 10版の改訂方針では、 「書誌分類表」 を目指すものの、 「NDCの根幹に関わる体系の変更はしない」 限りで、 という留保がありました[38]。もっとも、新訂 10 版に限らず、NDC は常に「7 版と同様に抜本的な改正は行わな い」 (新訂8版) 、 「分類表の構造に関わる改訂は避け」る(新訂9版)ことを方針に掲げてきました。しかし、ど こまでを「NDCの根幹に関わる体系」とみなすかについては、時代によって違いが見られます。これまでの歴史を もう一度振り返ってみましょう。 新訂 6 版から新訂 8 版までは、改訂をめぐる議論の中心は綱目表(第2 次区分表)レベルであり、要目表(第 3 次区分表)以下のレベルでは改訂のたびに相当数の改廃が行われました。しかし、新訂9 版、新訂 10 版では、 綱目表レベルはもちろんのこと、要目表レベルの改廃も極力避けられました。つまり、新訂9 版以降、 「NDCの根 幹に関わる体系」の範囲が綱目表から要目表へと拡大したと言えます。 手をつけてはならない「NDCの根幹に関わる体系」の範囲が拡大するなかで、分類表の改善を図ることには自ず と限界があります。すでに新訂9版に向けた改訂の時点で、当時の委員であった千賀正之は「NDCの根幹に関わる 体系」を維持しながら改訂する難しさを吐露していました。 現在の ND C は、たとえていえば小さな旅館が毎年増築し、規模を拡大してきたようなもの、だから二階を支え る柱が一階では邪魔だったり、各階の窓の向きや大きさが不揃いだったりしている。だが或る柱が邪魔だとい って取り除いたら、旅館全体が瓦解する。[39] 「 NDCの根幹に関わる体系」の見直しを避ける従来の方針は、果たして今後も続けていけるのか。分類項目数の 変動の際立った少なさはそのことを問いかけています。 その点で、要目表レベルの分類項目である546と[647]が今回削除されたことは、従来の方針が将来変わるきっ かけになるかもしれません。546(電気鉄道)は、547/548(通信・情報工学分野)を将来拡張する可能性に備えて 削除されました。また、[647](みつばち.昆虫)は、綱目表レベルである630(蚕糸業)を647に移設する余地 を与えるために削除されました[40]。新訂10版は、将来の分類表の再編に備えて布石を打ったと言うことができ るでしょう。 新訂 10 版ではこのほかに、211/219(日本地方史)で時代区分できる固有補助表が新設されるなど、主題をよ り正確に表現するための取組みもなされました。 -6- NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号) (2) わかり(使い)やすい分類表 改訂方針では、 「分類作業が行いやすく、 また利用者にもわかりやすい分類表」 を目指すことも掲げられました。 「わかり(使い)やすい分類表」であるためには、 (a)本として使いやすい(ページを見つけやすい、ページが見 やすい)ことはもちろんですが、なにより(b)分類表が分類作業者・利用者双方にとって理解しやすいものでな くてはなりません。 そこで新訂10版では、充実した「序説」 「使用法」を設けて、NDCの分類構造を首尾一貫して論理的に説明する ことに重点を置き、主題を分類記号に的確に変換する方法について詳細に解説しました。従来書架分類のための 指針とみなされていた「分類規程」は、著作の主題を分析的、合理的に明確にするための基準として見直され、 書架分類はそこで得られた(複数の)分類記号の中から、排架に最も適切なものを選ぶ、という考え方で整理さ れています。また、資料が複数の主題を扱っている場合には、多面的な検索に資するよう、書誌分類で分類を重 出することが推奨されました。さらに分類表では、論理的な整合性がとれるよう、分類項目の構成要素(分類記 号、分類項目名、注記等)の標準化が進められました。 「論理的なわかりやすさ」という観点は、将来の改訂のあり方を考えるための重要な視座を与えてくれます。 そうした意味でも、新訂10版はこれまでの改訂方法の区切りとなった版であると言うことができるでしょう。 【おわりに】 NDC の 80 年以 上に及ぶ歴史を、2 回に分けて振り返ってきました。NDC は標準分類法を求める時代の声に応え て誕生し、時代の変化に応じて、その時々の標準分類法としての役割を果たすべく変化してきました。 それでは、ウェブ時代にあって、これからも標準分類法としての役割を果たすために、NDCはどのように変わっ ていくべきなのでしょうか。新訂10版刊行当時の委員長であった那須雅煕は、次のように述べています。 図 書館を取り巻く情報環境は、高度情報化社会の進展に伴い、さらに輪をかけたような変化が起きている。 (中 略)世界の図書館等では、今まさしくそのような過渡期にあって、新たな書誌情報の作成・提供・管理に向け た努力が続けられている。分類法においてもそれは同じであり、分類が主題情報としてユーザの探究を助ける 役割を果たすために、多くの課題に取り組まなければならない。NDCの機能や構造上の改善に加えて、現代の情 報環境に適合するようなNDCを開発する必要があろう。[41] 同時に 那須は、 「このような混沌とした段階において新訂10 版を刊行することには、理想を追求することを断 念する諦観ととりあえず一区切りを付ける果敢な決断が求められた」とも述べています。課題の解決は新訂11版 以降に委ねられていると言えるでしょう[42]。 筆 者は前章で、新訂 10 版をこれまでの改訂方法の区切りとなった版であると結論しました。来るべき新訂11 版は新たな改訂方法を模索することになります。図書館による新訂10 版の適用は、新訂 11 版に向けたスタート です。新訂10版の適用は、各図書館における分類作業の基本方針と分類表の解釈を示した分類基準[43]を策定し て終わりではありません。多くの事例を積み重ね、統一した基準を検討するなかで、新訂11版に向けた課題が具 体的に明らかになってくるでしょう。分類作業現場の声―それはその先にいる図書館利用者の声にほかなりませ ん―が改訂には不可欠なのです。 今から86年前に標準分類法の目的が利用者の検索能率向上にあることを喝破し -7- NDL書誌情報ニュースレター2017年 1号 (通号 40号) た鈴木 賢祐の、 「分類は、 したがつて分類表は、 分類者のためのものであるより以上に利用者のためのものである」 という言葉は[44]、時代を超えて、NDCのあるべき姿を示しています。 筆 者は 2008(平成 20)年から 2016(平成 28)年まで、日本図書館協会分類委員会委員、国立国会図書館での 国内刊行図書の分類作業および新訂10版の適用に関する検討の立ち上げ等の業務に携わる機会を得ました。 付与 した分類が利用者の検索の役に立っているのか、利用者が求める資料まで論理的にたどれるためにどのように分 類表を改訂・解釈する必要があるのかを模索する毎日でした。 「分類表は、分類者のためのものであるより以上に 利用者のためのものである」という鈴木の言葉は、筆者の実感でもあります。新訂10 版の適用が契機となって、 よりよい NDC に向けての議論が活発に行われることを願ってやみません。NDC の歴史を振り返った拙文が、その ための一助になれば幸いです。 髙橋 良平 (たかはし りょうへい 総務部 企画課) [1] 和田萬吉. 分類法式の画一に就いての一考察. 図書館雑誌. 1931, 25(2), p. 41-43. [2] もり・きよし. 「NDC新訂8版」あれこれ. 学校図書館. 1979, 350, p. 36-40. [3] 「新訂」には、第5版の単なる増刷ではなく、分類委員会によって「内容の改訂」が行われた版次という意 味があります。 藤倉恵一. “序文に見る日本十進分類法概史”. 分類研究分科会の60年、NDC へのこの10年. 分類研究分科会, 私立大学図書館協会東地区部会研究部分類研究分科会, 2016, p. 87-105. [4] 加藤宗厚. 国立国会図書館とNDC. 図書館界. 1950, 2(2), p. 26-34. [5] もり・きよし. 司書55年の思い出. もり・きよし氏を偲ぶ会, 1991, p. 29-30. [6] 森清原編. 日本図書館協会分類委員会改訂. 日本十進分類法. 新訂6版, 第1 分冊 (本表編). 日本図書館 協会, 1950, p. 5. [7] 加藤. 前掲注 [4]. [8] 加藤. 前掲注 [4]. [9] 新訂 6 版は 1950 年 7 月「第 1 分冊(本 表篇) 」 、12月に「第 2 分冊(索引篇) 」が刊行されました。翌1951 年、本表篇と索引篇を1冊にまとめた新訂6-A版が刊行されます。 [10] 加藤宗厚. 図書の分類. 改稿版. 理想社, 1966, p. 57. [11] たとえば戦前・戦中のNDCでは、朝鮮史は日本史(210)の中に位置づけられていました(219)。第二次世 界大戦後に朝鮮が独立したことを受けて、新訂 6 版ではアジア史の中に位置づけ直されました(221)。これに伴 い、日本史(210)の各地方史(211/219)もすべて再構成されました。 [12] 日本図書館協会分類委員会. NDC・7版へ のあゆみ. 図書館雑誌. 1959, 53(9), p. 384-387. [13] 加藤. 前掲注 [10], p. 69-71. [14] 鈴木賢祐ほか. NDC・その将来はどうなるか(座談会) . 図書館雑誌. 1959, 53(9), p. 392-396. [15] もり・きよし原編, 日本図書館協会分類委員会改訂. 日本十進分類法.新訂8版. 日本図書館協会, 1978, p. 14. [16] 項目名の変更を除けば、新訂7版から新訂10版に至るまで、綱目表レベルでは新訂6 版の分類体系が維持 -8- NDL 書誌情報ニュースレター2017 年1 号 (通号40 号) されています。新訂9 版で09(貴重書.郷土資料.その他のコレクション)が新設されましたが、もともと09 は 空き番号でした。 [17] もり・きよし. NDC の改訂と切替作業について. 図書館雑誌. 1961, 55(9), p. 282-285, 300. [18] 鈴木賢祐. どれが標準分類表か?(一)乙部案-毛利案-森案. 図書館雑誌. 1929, (119), p. 262-265. [19] 以下の論文には、NDC の前身である「和洋図書共用十進分類表案」からNDC 新訂6 版まで、おもな版の分類 項目数の変遷が表で示されています。 もりきよし. NDC 五十年雑記. 図書館雑誌. 1979, 73(8), p. 391-393. [20] 加藤. 前掲注 [10], p.45. [21] 中村初雄. 書架分類としての日本十進法. 図書館雑誌. 1979, 73(8), p. 401-404. [22] 前掲注 [15], p. 14. [23] もり・きよし. NDC 新訂8 版について―現場職員のためのガイダンス. 図書館雑誌. 1980, 74(10), p. 566- 569. [24] 日本図書館協会. 中小都市における公共図書館の運営:中小公共図書館運営基準委員会報告. 日本図書館 協会, 1963, p. 140-141. [25] たとえば『図書館雑誌』では、1965 年に、図書館の技術についてのリレー特集が組まれ、整理技術の特集 (10 月号)をはじめとして、分類を含む整理業務に対して多くの批判や意見が取り上げられました。 特集・図書館の技術―整理. 図書館雑誌. 1965, 59(10), p. 424-445. [26] 石山洋. “第1 回整理技術全国会議”の概要. 図書館雑誌. 1970, 64(9), p. 446-447. 当時分類委員会委員であった阿刀田高は、「標準化の別な一歩として」、整理業務に多くの労力を割くことができ ない図書館のよりどころとなるNDC、NCR、BSH の簡略版を提案しています。 阿刀田高. ツールの標準化について:整理技術を中心として. 図書館雑誌. 1967, 61(6), p.237-239. [27] 前掲注 [15], p. 7. [28] 前川恒雄, 石井敦. 図書館の発見. 新版. 日本放送出版協会, 2006, p. 173-181. [29] 石山洋. NDC第9版試案における医学・薬学部門. 薬学図書館. 1990, 35(4), p. 238-247, http://doi.org/10.11291/jpla1956.35.238, (参照 2017-01-31). [30] 戸澤信義. NDC と私:特に戦後縮刷版刊行当時の事情と第 8 版に対する批判と感想. 図書館雑誌. 1979, 73(8), 1979, p. 396-398. [31] 石山洋. 日本十進分類法の将来. 短期大学図書館研究. 1992, 12, p. 19-24. [32] もり・きよし原編, 日本図書館協会分類委員会改訂. 日本十進分類法.新訂9 版. 日本図書館協会, 1995, p. xxviii. [33] 千賀正之. 新訂9 版(NDC)のあらまし. びぶろす. 1995, 46(9), p.212-215. [34] 石山洋. NDC 新訂9 版における現代化. 学校図書館. 1995, 541, p. 44-48. [35] 新訂10 版の概要については、下記の拙稿をご参照ください。 髙橋良平. 『日本十進分類法』新訂10 版の概要. カレントアウェアネス. 2015, (324), CA1850, p. 11-14, http://current.ndl.go.jp/ca1850, (参照 2016-12-23). 髙橋良平. NDC10 版の改訂概要と11 版に向けた課題について. TP&D フォーラムシリーズ : 整理技術・情報管理 等研究論集. 2016, (25), p. 36-55. 髙橋良平. 日本十進分類法新訂10 版について. 薬学図書館. 2016, 61(3), p. 175-180. -9-
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[36] 金中利和. 日本十進分類法新訂第10 版の作成について:JLA 分類委員会の改訂方針. 図書館雑誌. 2004,
98(4), p. 218-219.
[37] 大曲俊雄. “NDC10 版改訂箇所一覧”. 日本図書館協会分類委員会ホームページ.
http://www.jla.or.jp/committee/bunrui/tabid/187/Default.aspx#ndc_kaiteikasyo, (参照 2016-12-23).
[38] 金中. 前掲注 [36].
[39] 千賀正之. 日本十進分類法第9 版試案の概要5「総記」の部. 図書館雑誌. 1991, 85(3), p. 153-156.
[40] [647]は646.9(みつばち.昆虫)の二者択一項目でした。
[41] もり・きよし原編, 日本図書館協会分類委員会改訂. 日本十進分類法. 新訂10 版. 1 (本表・補助表編).
日本図書館協会, 2014, p. 5.
[42] 2015(平成 27)年には、ウェブ時代に対応した NDC の活用法を検討するため、新訂8 版、9 版を使った
NDC のLinked Data 化の実験が日本図書館協会と国立国会図書館と共同で行われました。これからのNDC のあり
方を探る試みは着実に進められています。
中井万知子. 藤倉恵一. 橋詰秋子. 福山樹里. 神崎正英. 日本十進分類法のLinked Data 化 : セマンティック
Webへの対応を目指して. 情報管理. 2016, 59(4), p. 209-217,
http://doi.org/10.1241/johokanri.59.209, (参照 2017- 01-30).
[43] 国立国会図書館における「日本十進分類法(NDC)新訂 10 版分類基準」は、以下のページで公開されていま
す。
国立国会図書館. 分類・件名(NDLC、NDLSH など).
http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/classification_subject/index.html, (参照 2017-02-22).
[44] 鈴木賢祐. 分類の標準化に関する若干問題:「分類法式の画一に就いての一考察」を読んで和田博士の高教
を仰ぐ。. 図書館雑誌. 1931, 25(8), p. 281-290.
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NDL 書誌情報ニュースレター2017 年1 号 (通号40 号) 第41 回ISSN センター長会議報告―ISSN 規格改訂と逐次刊行物目録標準化の動向 【はじめに】 国際標準逐次刊行物番号(ISSN)は、逐次刊行物(雑誌・新聞等)を識別可能とするための国際的なコード番号 です。ISSN を割り当て、維持・管理する国際的組織「ISSN ネットワーク」[1]には、2017 年1 月現在89 か国が参 加しています。 ISSN ネットワークの各国のセンター長が1 年に1 回集まり、重要事項を検討する会議が「ISSN センター長会 議」です。第41 回は、2016 年11 月9 日から11 日にかけてブラジルの首都ブラジリアにある科学技術情報研究 所(IBICT)で開催され、9 か国から11 名が参加したほか、ウェブ会議での参加(7 か国7 名)もありました。な お、南米での開催は、2007 年にブエノスアイレスで開催された会議以来9 年ぶりとなります。今年の議題からい くつかを報告します。 ブラジリアを象徴する建物の一つといわれる「カテドラル・メトロポリターナ」
- ISSN 規格改訂の動き ISSN 規格(ISO 3297)の改訂については、前回会議でも予告されていました[2]。 今回のISSN 規格の定期的な見直し(Systematic Review)は、専門家らで構成されるワーキンググループによ って進められ、手続きの完了までに2 年から4 年ほどかかる見通しです。 「ISSN を無料で付与する」という規定は、この見直しに先行する形で行われたISO/TC46/SC9 での改訂投票の 結果、2016 年3 月に削除されることが決定しました。この決定を受け、ISSN 国際センター(以下、国際センター といいます)は、ISSN センター未設置国の出版者や複数の国に事務所をもつ多国籍出版者による出版物に対して 国際センターが付与するISSN について、課金する方針を提示しました。また、今回の会議では、各国のセンター によるISSN の付与に対して課金するか否かについては、各センターに判断が任される旨の説明がありました。 今回の見直しのおもなポイントは三つあります。第一に、ファイル形式の異なるオンライン資料への対応があ げられます。ISSN では、同一内容のオンライン資料について、EPUB とPDFなどファイル形式が異なる場合でも同 一番号が付与されますが、国際標準図書番号(ISBN)では、同じオンライン資料であっても、ファイル形式が異 なっていれば別の番号が付与されます[3]。そこで、ISSN も、ISBN と同様の対応をとるか否かが検討課題となっ ています。 -11-